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蜜柑日誌

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2020.05.18

オーナーの豆知識

気象観測と配管

今回はミカンの生育環境をより良い状態にするために、
これまで伊藤ミカン園の活動を支えてきた裏方的存在をご紹介させていただきます。

まず一枚の写真をご覧ください。赤い柱。
これは気象情報をより詳しくデータで可視化するために、私の父が建てたものです。

熊本で金峰みかんを育てる伊藤ミカン園の赤い柱

簡単に言うと「風向・風速・気温・湿度・地温・日射(日がどのくらい温めたか)・日照(日が昇り沈むまでの時間)・雨量」を調べる装置です。

つまりよく分からんですね、いきなり言われてもどう活用するんだと。

この装置を使って風向きや風速を調べれば、肥料を散布する効果的な時間帯が分かり、液体の掛かりづらさを防ぐことができます。また地温を調べれば、生育しやすい土地なのか、そうでないのか、品種の生育の向き・不向きが数字で分かります。

これは1時間単位で数値として分かる仕組みになっています。去年と比べて雨量が多ければ、肥料を散布するタイミングをずらしたり、日射が減っているから生育が悪くなっているなど、色々と可視化されるため面白いです。

例えば「去年はミカンの花は咲くのが早かった」とか、そういった話もデータと紐づけて考えることができます。「今年は品質が良いな」などと感じていることが可視化され、それが理由として分かってくると、去年と行動が変わるので、必然と品質を維持することにつながります。

金峰みかんが育つ熊本・伊藤ミカン園のミカン山からの光景

また伊藤ミカン園では、昔から「この土地は乾燥している」「粘土質だ」など、経験則で語る部分をデータとともに判断してきた経緯があります。

父は古い人間ですが、データを用いた判断における考え方には古くなく、経験則は大事だけれども勘違い「かもしれない」。その「かもしれない」を決して放っておきません。

またデータを使ったアプローチは、ここ数年の話ではなく、30年以上も前から行っていますので、私も自然と違和感なく進めることができています。

この気象観測装置は、大学よりモニター農家として認定されたときに父に話がきて設置が実現したのですが、「地温が優れている」という結果が出てきたときは驚きました。

熊本はミカンの産地の一つですが、伊藤ミカン園のある地域は産地と言われる場所から離れています。

金峰みかんが育つ熊本・伊藤ミカン園のミカン山からの光景

しかし、そうであるにも関わらず、私たちがミカンを栽培する地域は、熊本の有名な産地と比べて地温が高く、他よりも栽培に適した場所でした。こういったデータの蓄積は、そのミカン園のストーリーを表す大事な要素になるのかなと思います。

また、それによって栽培やPRの方法が変化していくと、農家自体の価値も上がってくるのではないかと考えています。

例えば、スマート農業を取り入れたけれど変化が無く、お金だけかかってしまったという話をよく聞きます。これはデータを有効活用できていないのだと私は思います。

そのため伊藤ミカン園の「気象観測装置」は、栽培にもPRにも非常に大切な要素の1つなのだと、改めて実感しています。

最後にもう一つ、私たちの活動を支えているもの。それは配管です。

熊本・伊藤ミカン園での金峰みかん栽培に必要な配管

土に埋め込んであって、伊藤ミカン園の用地すべてに配管されています。これがあることで散布機が壊れても、ホースを繋いで肥料の散布が可能です。

また作業小屋に大きなタンクを設置しているため、配管通して送るだけで済み、効率も良いです。

熊本・伊藤ミカン園での金峰みかん栽培に必要なタンク"

配管していないと、小さなタンクを軽トラックなどに載せて移動しなければなりません。場所によっては斜面に車を止めなけばならないので、安全性と効率性を考えた結果、配管することにしました。

これが地味に私たちの活動を助けてくれます。散布機は修理が多いため、突然使えなくなるといったことも考えられます。

熊本・伊藤ミカン園での金峰みかん栽培に必要な肥料散布

そういった緊急時に散布をしてあげられないと、害虫にやられたり、品質に影響が出てくるので無視できないのです。

収穫は勿論大事ですが、品質維持は収穫するまで続きます。そのため、いつでも対応できるように設備の手入れをすることは、毎年欠かせない事柄となっています。

ミカンの品質維持は、様々な設備を使って行っています。一部ではありますが、地味に活躍してくれている、無くてはならない大切な仲間でもありますね。

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